王羲之 姨母帖

 

古朴な形と厚みの線に情愛こもる

 

ここにあげた「頓」は王羲之の「姨母帖(いぼじょう)」のなかにある。姨母帖は

王羲之の母の姉妹に当たる人が死んだという知らせに対する返書である。

王羲之の書の特徴は、たたずまいがみずみずしく品格の高いところにあるが、

姨母帖の字は彼の書のなかでも特異な存在の一つといわれている。彼の初

期の書と思われ、古朴な形と厚みのある線で表現されているのである。

みずみずしさはどこにも見当たらない。むっくりとして何かが盛り上がってくる

ような力が、見る者に迫ってくる。そこにはハッタリやおどかしなどは感じられ

ず、逆に穏やかで情愛の温かさを感じることができる。

この書は技巧などみじんもないだけでなく、非常に素朴である。

悲しみのなかにあって、この手紙を受け取った人は、きっと心から慰められた

に違いない。

 


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